開発途上国等の若者を日本の産業界に受け入れるということ

コミュニケーションチェックリスト(回答編)

1: 実習生受入れに関する情報は、生活指導員・技能実習指導員間で、情報交換を密にし、常に情報を共有するようにしている。

実習制度については、要となる総務部門が理解をしていても、実際に実習生が最も長い時間を過ごす現場では、理解されていないことが少なくありません。実習生受入れはとても労力が要るという認識があまりされておらず、指導員だけがその業務を任され、誰にも協力してもらえず、パンク寸前の状態になっているケースもあります。実習生受入れは会社全体で制度をよく理解した上で取り組むことが成功のカギと言えるでしょう。もしも社内のある一部の人しか制度への理解がない場合は、勉強会を開く等の工夫をして、会社全体で実習生を受け入れる協力体制を整えつきの名簿を持ち歩くとよいです。

2: 実習生全員の名前を覚えている。

外国の方の名前は日本ではなじみが薄く、似たような名前が多いこともあり、特に大人数の受入れをされている場合は、全員の名前を覚えることは難しいでしょう。しかし、人は誰でも「個」として周囲に認めてもらいたいものです。「実習生」とひとくくりでまとめるのではなく、1人1人を見る入り口として、名前を覚えて呼んでみましょう。慣れるまでは、顔写真つきの名簿を持ち歩くとよいです。

3: 実習生に会うと、なるべく声をかけるようにしている。

日々の業務に追われていると、なかなか実習生と話をする時間がないかもしれませんが、顔を合わせたときは「元気ですか?」、「困ったことはありませんか?」等、声をかけるようにしましょう。「実習生から話しかけてこないなら、こっちから声なんかかけない」という姿勢の方もいるかもしれませんが、どちらから声をかけるという決まりはありません。実習生とのコミュニケーションが不足していると感じている場合は、日常のちょっとした会話から始めてみてはいかがでしょうか。

4: 実習生母国の習慣やビジネスマナーについてよく理解した上で、日本の習等について指導を行っている

「郷に入れば郷に従え」という言葉がありますが、実習生に100%日本へ順応させることを求めるのは酷でしょう。実習生は長い間、母国の習慣で生活をしてきたため、日本での習慣を勉強して頭で理解をしても、長年の習慣を変えることは、日本人の想像以上に難しいものです。指導員は実習生の母国の事情もよく理解した上で、「みんなの国だと○○ですが、日本では□□です。なぜなら△△だからです。」といった指導を行うと、実習生に受入れてもらいやすくなります。

5: 時々、実習生の宿舎に行き、清掃状況や生活状況を確認している。

宿舎では様々な性格の実習生が1つの部屋で集団生活をしていますから、部屋によっては清掃が行き届いていない場合もありますし、部屋の状況から実習生の日常生活を伺い知ることもできます。時々、宿舎を訪れることが生活面での指導をする上で必要です。また、宿舎は実習生の個人的な空間ですから、普段会社では話さないことも、宿舎では話が出来、実習生とのより深いコミュニケーションを築くことに繋がるでしょう。

6: 日本語教育を重要視し、実習生と話す時はわかりやすい日本語を使うよう工夫している。

実習生にとって、日本語をどれだけ理解しているかということが、日本での実習をどれだけ実り多いものにするかということに結びつきます。指導する側にとっても同じです。日本語の修得なくして、技術の修得は難しいでしょう。しかし、実習生が出国前に学習したテキストの中の日本語(です・ます調の丁寧語)と、現場で飛び交う日本語(略語や職人気質の日本語)は全く異なり、入国直後の実習生は概ね戸惑う傾向にあります。実習生と接する日本人は、彼らがわかりやすい日本語で根気よく話をすることが大切です。

7: 実習生と実習時間外での交流がある。

実習生は日本の名所に興味はあっても、どのように行くかわからずに自分たちで行けないこともあります。時々はレクリエーションを企画して、休日に実習生を連れ出してあげるのもよいでしょう。また、日本文化を理解するために、日本料理を一緒に作ってみたり、地域の活動に積極的に参加させてあげてはいかがでしょうか。普段見ることができない実習生の素顔に触れて、より親密な信頼関係をつくるきっかけになるかもしれません。

8: 何か問題が発生した時、頭ごなしに実習生を責めるのではなく、話し合いによって解決する。

問題が発生すると、実習生に非があると決めつけて、よく話も聞かずに注意をしてしまう場合があるようですが、まずは何があったのか、何が原因なのかを実習生やその問題に関わった人からよく話を聞いて、事実関係を確認することが非常に大切です。言語の問題から実習生は不利なことが多く、誤解が招いた結果ということも多々あります。誤解があった場合は、よく実習生に説明し、実際に実習生に非があった場合は、指導するようにしましょう。

9: 必要な情報(例えば制度、法律、契約内容)について、きちんと実習生に説明し、内容が複雑な場合は、必要に応じて通訳を介し、確実に理解させるようにしている。

「難しい日本語はわからないだろう」、「どうせ説明したって理解できないだろう」と言って、必要な情報をきちんと説明しないと、実習生が誤解をしていたり、後々問題に発展することがあります。実習生にとって必要な情報は、彼らが確実に理解するまで根気よく説明をすることが大切です。悪気はないのに説明をしていなかったことが、実習生からは秘密にされたと解釈され、そこから会社への不信感が生まれることもあります。

10: 通訳がいるからといって、通訳任せにしない。

指導員は実習生受入れ業務以外にも担当業務があり、そちらの方が忙しいことも多々あることと思います。そのような状況になると、ついつい通訳に実習生への伝達事項や生活指導までを任せてしまうケースも多いようです。通訳はあくまで通訳ですから、指導員が主体となって実習生を指導する必要があります。実習生受入れ業務が疎かになると、実習生の状況を把握できず、知らず知らずのうちに、彼らの中で起こっていることに気づかず、問題に発展することも少なくありません。